今回はおすすめの英文解釈の参考書、スタディサプリ講師の肘井学先生の『肘井学の読解のための英文法が面白いほどわかる本』のレビュー、使い方を紹介します。基礎英文法を学習した後、英文解釈の最初の1冊としてとてもおすすめです。
同じスタディサプリ講師の関正生先生の『世界一わかりやすい英文法の授業』については「『世界一わかりやすい英文法の授業』関正生先生の有名な英語参考書をレビュー」こちらの記事で紹介しています。
『肘井学の 読解のための英文法が面白いほどわかる本』の特徴・おすすめな点
本の構成と特徴
- 序章「SVの発見」
- 1章「意味のカタマリ」(名詞句、名詞節、形容詞句、形容詞節、副詞句、副詞節)
- 2章「識別」(to do, -ing, 過去分詞, that, it, as)
- 3章「構文」(接続詞、倒置、省略、強調構文、呼応、ネクサス、挿入、比較、複合関係詞)
- 4章「動詞の型」(第4文型、第5文型、その他SVO to do, SV A from B などの動詞の型)
全223ページ、全33テーマで、各テーマにつき
- 例題の英文が4~5つ
- 例題で学んだことで読める確認問題が3~5つ
- 大学入試問題から抜粋した少し長めの英文が1つ
の全部で約350の例文を使って英文の読み方を学んでいきます。
例文の解説は
- 「SVOC、句や節をまとめるカッコ、修飾関係を示した矢印」がひと目で分かる図解
- 2~4行の文章による解説
- 和訳
この3つがセットになっていて、たまに「ポイント」というテーマを補強する重要ポイントの解説やまとめ図表が挟まれます。このポイントは全部で50あります。
また、「本編に入る前に」にて、解説を理解するために必要な英文法用語も説明されていますので、「句ってなんだっけ?」「SVOCって?」「副詞って?前置詞って?」という人も最初に確認してから本編の学習に入ることが出来ます。
巻末には各テーマの例文全ての英文日本語文のまとめが165文収録されています。
別冊は確認問題と発展問題の図解・解説・和訳です。
ちなみに、英文法用語についてはこのサイトでも紹介していますので参考にして下さい。
関連記事:英文法用語解説記事の一覧
英語の句・節、各品詞の機能や可能性がまとめられている
1章と2章で句・節、各品詞の働きのパターンがまとめてあります。これは個人的にかなりポイントが高いところです。英文解釈の勉強の初期に、句や節、品詞のありえるパターンを予め全部頭に入れておくことはとても重要です。
例えば、「形容詞句」と言われてどんなものが形容詞句になるか答えられますか?「-ing の可能性」を全て言えますか?
この本ではそういった英文解釈に役立つ基礎知識を、最初の方のテーマできっちりと整理することが出来ます。数は少ないのですが、これらの知識は意識して覚えていないと中々パッと出てこないものです。
こういう知識がひと通り頭に整理されていないと、先ほどの例でいうと形容詞句になるものがものすごくたくさんあるように感じてしまうんですよね。実態が分からないから必要以上に恐れてしまう状態といいますか……。可能性を限定出来る状態と、パターンがいくつあるのかすら分からない状態だと、前者の方が解釈の方向性を決めやすいというのはお分かりいただけるかと思います。
ちなみに、薬袋先生の『基本からわかる英語リーディング教本』でも「Frame of Reference」というものを暗記するように指示されますが、これも同じようなものです。
他には『難関大学突破 究める英語長文』(絶版)なんかにも載っていました。
英単語の暗記でも似たことが言えます。例えば「実際に覚えないといけない単語数はいくつか」ということが分かっているかどうかで気の持ちようが全然違ってきます。
短文で徹底的に英文解釈の練習ができる
英文解釈の参考書というと、入試問題などから数行の英文を抜粋したものを使って英文法や構文などの解説をしていくタイプの本が多いと思いますが、この『肘井』は徹底的に短い短文です。テーマの最後の発展問題でやっと大学入試の少し長めの英文が出てきますが、これもやはり短文です。英文解釈の最初にやる参考書として最適な理由の1つです。
また、巻末に各テーマの例文全ての英文・日本語文のまとめが165文収録されていますので、ある程度英語が得意な人はこの部分をざっと確認して、どんな英文法や構文がポイントなのか分からない文や全く読めない英文の解説から潰していくという使い方も出来ます。
例文の英単語が簡単&語注があるので、英文解釈のテーマに集中できる
英文に使われている英単語は簡単になっていて、例題の165文は中学レベルの英単語です。たまに出てくる少し難しめの英単語や英熟語には語注(意味)がすぐ下についています。これによって、英文の読み方を勉強したいのに英単語の意味が分からず、辞書を最初にひかないとダメという状況を避けることが出来ます。つまり解釈のテーマの学習だけに集中できます。
この配慮は学習者にとってとてもありがたいです。英文解釈の本の例文は大学入試問題から英文を引っ張ってきていることがほとんどなので、使われている英単語が難しかったりするんですよね。
例えば、定番の英文解釈の参考書『入門英文解釈の技術70 (大学受験スーパーゼミ徹底攻略)』なんかも結構おすすめですが、扱うテーマ自体は簡単なのに例文の英単語が無駄に難しいです。これは勉強を進めていく上で地味に学習のストレスになります。
分かりやすい英文構造の図解と、簡潔な解説
出てくる英文の全てに「SVOC、句や節をまとめるカッコ、修飾関係を示した矢印」の図解がされていますので、英文の構造がひと目で分かるようになっています。文章での解説も2~4行と簡潔かつ分かりやすいです。
『肘井学の 読解のための英文法が面白いほどわかる本』の使い方と注意点
『読解のための英文法』の使い方
基本的には「英文を読む→図解・解説を読む」というふうに最初から順番に読んでいけばOKです。その際、読めなかった英文には付箋を貼るなりペンでチェックするなりして後で復習出来るようにしておきましょう。
解説を読んで理解したら英文を何度も読み、左から右に一度読んだだけで問題なく理解出来るようにしてください。
『読解のための英文法』の注意点
この記事の最初で紹介した「本の構成」を見てもらえば分かる通り、この本は英文法項目を網羅しているわけではないので注意して下さい。つまり、この『肘井の読解のための英文法』を読むことでは英文法を体系的に学習することは不可能だということです。
例えば、仮定法なんかは if が省略された倒置のパターンでしか出てきません。普通の仮定法過去などは英文法を勉強する時にちゃんと理解出来ていれば難しいところはありませんからね。
基本的にこの『肘井の読解のための英文法』は「読みにくいであろう英文」がピックアップされて解説されている本であって、この本に載っていない英文法は読解には出てこないというわけではありませんので注意して下さい。
そのため、
などでひと通り英文法は勉強する必要があります。
関連記事:『大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】』のレビューと使い方!読みやすいおすすめの講義系参考書です。
『肘井のゼロから英文法』『大岩のいちばんはじめの英文法』などでは扱われなかった英文法項目で、『肘井の読解のための英文法』の図解・解説で理解出来ないところは総合英語を参照しながら勉強していきましょう。
関連記事:【英文法】総合英語はどれがおすすめなのか?『総合英語Evergreen』『ジーニアス総合英語』『アトラス総合英語』
また、『肘井の読解のための英文法』には短文しかでてこないので、英語の多読などで長文を読むことに慣れていきましょう。ある程度しっかりと英文を読めるようになれば、あとは英語の読書量を稼ぐのがとても大切になってきます。何でもいいので、興味のあるものをたくさん読み漁りましょう。
関連記事:【英語多読】高校基礎レベルで読めるGraded Readers(語彙制限本)と洋書の児童書のおすすめを紹介します。100万語はここで達成!
『肘井学の読解のための英文法が面白いほどわかる本』の次にやる参考書は?
さらに英文解釈力をレベルアップさせたいという人は、『肘井学の読解のための英文法が面白いほどわかる本』の次に西きょうじ先生の『ポレポレ英文読解プロセス50』に進むのがおすすめです。レベル的にもちょうど良いですし、分量も50文と少なく、本も薄いです。
関連記事:英文解釈のおすすめ参考書「ポレポレ英文読解プロセス50」最小の努力で最大の効果?!
最後に
『肘井学の 読解のための英文法が面白いほどわかる本』は個人的には英文解釈の参考書としては久々のヒットという感じですね。今までの英文解釈の参考書の良いところを取り入れた、後発組の良さがとても出ているバランスのとれた良著だと思います。大学受験はもちろん、TOEICなどのために英語を勉強している人にもおすすめです。
英文解釈最初の1冊はこの『肘井』をぜひ読んでみて下さい。