今回は、英語のスラッシュリーディングのやり方や効果などについて紹介します。スラッシュリーディングについては結構誤解している人も多いと感じていますので、上手く私の考えを伝えられたらと思います。
スラッシュリーディングとは?
(1)He is the man who I thought was your father.
彼は私があなたの父だと思っていた男だ。
(2)He is the man/ who I thought/ was your father.
彼は男だ/私が思っていた/あなたの父だと。
(3)He is the man/ who I thought was your father.
彼は男だ/私があなたの父だと思っていた。
スラッシュリーディングとは、上の例文の(2)(3)のように、英文を意味やフレーズごとの語句のかたまりで「スラッシュ(/)」を使って区切って読む方法です。
英文をスラッシュで意味ごとに区切ることで、英文を前から意味ごとに理解しながら読むことを意識した読み方の練習ができます。
この「前から英文を読んでいくタイプ」の英語の読み方に慣れると、前からどんどん意味を付け足していく感じで読めるようになるので、基本的に英文を左から右に一度読めば意味が理解出来るようになってきます。
一度英語を聞いて意味を理解する必要がある英語のリスニングでも、聞いた英文を頭で保持できるかどうか(リテンション)とともに、この「前からの意味のとり方」が出来るかどうかも重要になります。
「どうしても英語を後ろから読んでしまう(返り読み)から直したい」という人や、「単語1つ1つで目が止まってジリジリと読み進むので英文を読むスピードが遅い」という人が、英文の直読直解やスピードアップのための練習としてやるのがおすすめです。
「(1)の例文が分からない」という人はこちらの「連鎖関係代名詞」を解説した記事をどうぞ。
関連記事:連鎖関係代名詞とは?節の挿入?基本的な考え方からwhat使用や 省略パターンまで完全マスター!【英文法の苦手を克服!】
スラッシュリーディングのやり方
「どこでスラッシュを入れればいいの?ルールとかあるの?」と疑問に思う人もいると思います。
これの答えとしては「スラッシュを入れる場所に決まったルールのようなものはないので、(正しく解釈出来るのであれば)自分が読みやすいところで区切ってOK」ということになります。
ある程度自由にやってもらってかまいませんし、人によってスラッシュの間隔の広さは違います。
スラッシュを入れる場所
一応、定番の区切り方としては以下のようなものなどがあります。
- 大体2~6語くらいで区切る
- SVOCのキリのいいところで区切る
- 前置詞句などで区切る
- 接続詞で区切る
- 主語などにつく修飾語が長い場合に区切る
先ほど「正しく解釈出来るのであれば」とわざわざ書いたのには理由がありまして……
なぜかと言うと、スラッシュリーディングは基本的に「正しく英文を解釈出来る人がレベルアップするための練習として」やるものだからです。
正しく英文が読めない人が、今紹介した「定番の区切り方」をルールのように適用して機械的に英文を区切ってしまうと、スラッシュの位置がめちゃくちゃで意味のかたまりごとに英文が区切れないことも多いです。その場合、スラッシュリーディングをする効果はありません。
スラッシュを入れる場所が分からない人は
スラッシュを入れるところが全く分からない、意味の切れ目が分からない、という感じの「そもそもその英文がちゃんと読めない」状態の人が無理にスラッシュリーディングをしてもほぼ無意味です。変なところにスラッシュを入れてしまうので逆効果になる可能性すらあります。
かなり誤解している人が多いと感じているのですが、「スラッシュリーディングは、自分の読めない英文が読めるようになる方法ではありません」
「スラッシュが入れられない&スラッシュ関係なしにそもそも英文が読めない」という人は「まずは自力で正しく読めるように英文法や構文などの勉強」をしつつ、正しく読める人にスラッシュを入れてもらうか、最初からスラッシュが入っている英語教材を使って「スラッシュの入れ方・意味の固まり」に慣れる必要があります。
関連記事:【英語初心者必読】まず最初に勉強するべき必須の勉強3つ【必修基本セット】
スラッシュリーディングの効果は?やってはダメな読み方?
「スラッシュリーディングは自分の読めない英文が読めるようになる方法ではない」と言いましたが、では、スラッシュリーディングをする意味・効果は何なのでしょうか。それは、
- 英語を前からそのまま読むことに慣れることが出来る(リスニング力アップにもつながる)
- 英文を読む時、広い範囲の語句のかたまりを意識して読めるようになる。(英文を読む速度も上がる)
主にこの2点です。
英語の語順のまま英文を読めるようになる(直読直解)
1つ目は先ほども少し書きましたが、スラッシュリーディングに慣れると、英語を読む時に返り読みをしてしまう癖を修正する効果が期待できます。そして、英語を語順のまま理解出来るようになる(直読直解)ので、英語のリスニング力アップにも直結します。
「英語は聞き取れてるはずなのになぜか意味がわからない」と悩んでいる人は、英語を前から理解して読んでいく練習をすると改善される可能性が高いです。
関連記事:【英語リスニング】 聞こえても意味が分からない、理解が追いつかないのはなぜ?
英文を意味・語句のかたまりを意識して読めるようになる
2つ目の効果としては、英文を意味・語句のかたまりを意識して読めるようになります。ちょっとよく分からないという人もいるかと思いますので、例を挙げて説明します。
まず、日本語の文章を読む時、みなさんはある程度かたまりごとに読んでいると思います。
例えば、いま私が書いた文を読む時、1単語ずつを目で追って「日本語、の、文章、を、読む、時、」のように目線が6回動く感じで読んだりはしないですよね?
人によってどこで区切るかは多少違うでしょうが、「日本語の/ 文章を読む時」「日本語の/ 文章を/ 読む時」と読む人もいれば、これくらいの長さなら「日本語の文章を読む時」と、一気に見て読んでいる人もいるでしょう。
ところが、これが英語になると、先ほどの「日本語、の、文章、を、読む、時、」のような読み方をしている人がとても多いんですね。例えば最初に挙げた例文を
He/ is/ the/ man/ who/ I/ thought/ was/ your/ father.
と細切れにジリジリと右へ進んでいく読み方をしている人も結構います。こういう細切れの読み方でも、きちんと英語の語彙や文法を勉強していれば意味を正しく解釈することは出来ます。しかし、読むのはかなり遅いですし、読んでいる方も疲れます。一度目を通しただけで意味を把握することが難しいときもあるでしょう。
スラッシュリーディングはこういう細切れの英語の読み方をしている人が、「大きな語句のかたまりを一気に見て英文を読むことに慣れる」ために最適な英語の勉強法です。英語を読むのが遅い人が、英文を意味の固まりごとにパッとみて読めるようにして、英文読解スピードを上げていく練習になります。
決して「英文が読めない人が、英文を読めるようになる方法」ではありません。スラッシュリーディングを「やってはいけない読み方」のように言う人は、おそらくこのことを言いたいのではないかと思います。
関連記事:英語リーディング 英文を速く読むにはどういう勉強をすればいい?速読は必要なのか?
スラッシュリーディングの注意点
- スラッシュを正しく入れて読む練習をしないと意味がない。
- スラッシュを正しく入れるには、英文を正しく読めないといけない。
- 英文を正しく読むためには最低限の「英文法」や「英文解釈」などの勉強が必要。
- 最終的にはスラッシュを入れずに読めるように。
ある程度スラッシュリーディングに慣れるまでは、最低でもちゃんと読める人にスラッシュを入れてもらったり、最初から英文にスラッシュが引かれている教材を使ってある程度「意味のかたまりで区切る」感覚を掴むと良いでしょう。
スラッシュリーディングおすすめ教材
最後に、スラッシュリーディングにおすすめの教材を紹介しておきます。自分でスラッシュを引く必要がないので、スラッシュリーディング初心者でも安心して取り組むことが出来ます。
『大学入試 英語長文ハイパートレーニング』シリーズ 安河内哲也
安河内先生の『英語長文ハイパートレーニング』シリーズはスラッシュ付きの英文が載っています。基礎レベルの英文から難関大の入試に出るレベルの英文を扱った本まで、複数のレベルに分かれているので気に入れば同じシリーズでレベルアップしていくことが出来ます。スラッシュリーディングの練習として使う場合は、英語の長文問題部分は無視してOKです。
『毎日の英速読 頭の中に「英文読解の回路」をつくる』 James M. Vardaman
私が瞬間英作文用の教材としておすすめしている『毎日の英文法』の著者であるバーダマン先生の本です。こちらもスラッシュ付の英文が載っています。スラッシュリーディングの最初の教材としてはこちらをおすすめします。
関連記事:瞬間英作文 効果抜群のおすすめ教材、英会話例文集「毎日の英文法」ジェームス M. バーダマン の特徴・使い方!
『究極の英語リーディング』シリーズ アルク
『究極の英単語』シリーズや『キクタン』『キク英文法』などを出版しているアルクのリーディング教材です。こちらもスラッシュを使って区切って読む練習が出来ます。『究極の英単語』シリーズのようにレベル分けがされています。vol.1は本当に簡単なので、2から始めるのもアリですね。
CD付 プロ通訳強化メソッド活用 英語スラッシュ・リスニング トレーニング 小倉慶郎
通訳トレーニングの一環としてのスラッシュリーディング教材です。VOA Learning Englishのニュースが題材になっています。書名は『スラッシュ・リスニングトレーニング』となっていますが、英語のリスニング力を鍛えるためにまずリーディング力を鍛えるというコンセプトです。
関連記事:【VOA Learning English】シャドーイングのやり方とおすすめ教材【英語リスニング・スピーキング】
CD付 英語リプロダクション トレーニング 短期間で飛躍的に話せるようになる!
先ほどの『スラッシュ・リスニングトレーニング』と同じ小倉慶郎先生の本です。他にも「入門編」「アドバンス編」「ビジネス編」など複数出ていますので、自分のレベル等にあったもので練習が出来ます。