苦手な人が多い、英文法の難しい単元を分かりやすく解説する「英文法の苦手を克服」シリーズ、今回は「仮定法過去・仮定法過去完了」です。
「仮定法過去と仮定法過去完了の意味の違いが分からない」
「え?過去形なのに現在の仮定?」
「if がつけば仮定法だっけ?」
など、こんがらがっている人も多い単元ですので、この機会にしっかりと理解しましょう。
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仮定法とは
まず、仮定法の「法」とは、話し手の気分を表すための動詞の形のことです。そして、話し手の気分とは、簡単にいうと「内容を話し手がどのような気持ちで述べるか」によって
- 事実として述べるか(直説法)
- 仮定や願望として述べるか(仮定法)
- 要求として述べるか(命令法)
以上の3つに分かれます。この記事ではこの真ん中の「仮定法」を解説します。
仮定法は、「話し手が事実をそのまま述べるのではなく、自分の頭の中の仮想の世界のこととして、ありそうもないことを仮想したり、自分の願望や要求を表すような場合(実践ロイヤル英文法)」に使います。
直説法と仮定法の違い
次は直説法と仮定法の違いについてです。
If you like baseball, I will give you this ticket. (直説法)
If you liked baseball, I would give you this ticket. (仮定法)
上の例文は実際にあり得ることを述べています。「(好きかもしれないし、好きではないかもしれないが)もし野球が好きなら」ということを表します。これが直説法です。
下の例文は事実と反対の仮定を述べています。つまり、「(実際は好きではないが)もし野球が好きなら」ということを表します。これが仮定法です。
それでは、仮定法についてみていきましょう。
つまり、仮定法かどうかと if があるかは直接は関係ありません。
仮定法過去
仮定法過去の作り方と意味
If I had more money, I would buy it.
もっとお金があれば、それを買うのに。
仮定法過去でまず最初に理解してほしいのは、「名前が仮定法過去で、英文でも過去形を使っているけど、過去の仮定ではない」ということです。
「If +主語+過去形, 主語+ 助動詞の過去形 +動詞の原形」の形で、現在の事実と反対のことを仮定します。「もし~なら、…だろうに」という意味になります。上の例文では、「(現実はお金はないけど)もっとお金があれば、(現実は買わないけど)それを買うのに」という意味になります。
「もし~なら、…だろうに」の「もし~」の部分を条件節、「…だろうに」の部分を帰結節と言います。
be動詞を使う仮定法
If I were you, I would buy this book.
もし私があなたなら、この本を買います。
仮定法の 条件節(if節)の中でbe動詞を使うとき、過去形は was ではなく were を使います。
現実や未来に起こりうる可能性の低いことの仮定
If you got three hundred million yen, what would you do?
もし3億円手に入ったら、何をしますか?
仮定法過去は「事実と反対のことの仮定」を表すことが多いですが、現在や未来の「起こる可能性が低いことの仮定」を表したりもします。
上の例文では、話し手は実際に3億円が手に入る可能性はほとんどないと考えています。「まあまずないだろうけど、もし~なら」という感じです。仮定法は話し手の頭の中の仮想世界のことを仮定するのでこういう使い方ができます。
仮定法過去は動詞の過去形を使うのに、なぜ現在のことの仮定を表すのか
「仮定法過去は動詞の過去形を使っているのに、なぜ現在の仮定なの?」と疑問に思う人は多いかと思いますので、この点も説明しておきます。
簡単に言うと、過去形を使うことで、「現実から離れた感じ(仮定)を表すことができるから」です。
大西泰斗先生の『一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)』など、色々な英文法書や参考書などにも書いてあるので既に知っている人も多いかもしれませんが、過去形は「離れた感じ」を表すことが出来ます。一般的に過去形と言われてイメージするのは現在から離れているという「時間的に遠い」という意味の過去です。
これと同じように考えて、「現実」から遠くなると「仮定・仮想」になるわけですね。
仮定法過去完了
仮定法過去完了の作り方と意味
If I had had more money, I could have bought it.
もしもっとお金があったなら、それを買えただろう。
If +主語+had+動詞の過去分詞, 主語+助動詞の過去形+ have +過去分詞の形で、「過去の事実と反対のこと」を仮定します。「もし~だったなら、…だっただろうに」という意味になります。上の例文でいうと「実際はお金はなかったし、それを買えなかった」ということです。
過去のことを仮定するときに過去完了形を使うのはなぜ?
動詞の過去形で現在のことの仮定を表すので、過去のことの仮定を表す場合は過去完了形を使って時制をずらします。
完了形を使って過去にずらすというのは、助動詞、動名詞、不定詞などでもありますよね。
関連記事:完了形の不定詞(to have 過去分詞)とseem型の動詞、時(時制)の組み合わせを完全マスター!【英文法の苦手を克服!】
If節の中に助動詞を使う場合の仮定法過去完了
If I could have known it, I would have despised you.
もし私がそれを知りえたなら、君を軽蔑しただろう。
過去完了形は had + 過去分詞ですが、助動詞の過去分詞は作ることができないので「助動詞+ have +過去分詞」の形にします。これには例外もあったりしてもう少しややこしいのですが、応用として余裕があれば頭に入れておきましょう。
【混合仮定法】仮定法過去と仮定法過去完了が混ざった形
条件節が仮定法過去完了、帰結節が仮定法過去の混合型
「もしあの時~だったら、今…なのにな」ということも、もちろん表すことが出来ます。
「条件節は仮定法過去完了、帰結節は仮定法過去」というように、仮定法過去と仮定法過去完了を混ぜて文を作ります。混合型の仮定法と言われたりもしますね。上の例文みたいに、いつの話なのかをはっきりさせるために時を表す語句を使うことが普通です。
条件節が仮定法過去、帰結節が仮定法過去完了の混合型
逆に、「条件節は仮定法過去、帰結節は仮定法過去完了」という形もあります。
If I were a woman, I would have fallen in love with him.
もし私が女性なら、私は彼に恋をしてしまっただろう。
このように「(今)もし~なら、(あの時)だったのに」ということも表すことが出来ます。この(今)の部分は正確には「昔も今も変わらない事実と反対のことの仮定」がきます。最初は「?」となる人もいるかと思いますが、例文をみればわかると思います。応用として紹介しておきます。
I wish, If only 願望を表す仮定法
I wish, If only を使った願望を表す仮定法についてはこちらの記事で詳しく説明しています。”I wish” は2021年度からの学習指導要領では中学英語の範囲になりました。
関連記事:【仮定法】I wish と If only の意味、使い方、違いをわかりやすく解説!【英文法の苦手を克服】
未来のことの仮定を表す仮定法 should, were to
未来のことの仮定を表す仮定法は、こちらの記事で詳しく説明しています。「were to, should」の使い分けがよく分からないという人が多いところなので、しっかりと理解して使えるようになって下さい。
関連記事:仮定法 未来のことの仮定を表す「were to と should の違い」を解説!【英文法の苦手を克服!】
仮定法現在
that節の中で、主節の時制と関係なく動詞の原形を使うことがあります。これを「仮定法現在」といいます。「仮定法現在」はこちらの記事で詳しく説明しています。
関連記事:「仮定法現在」を完全マスター!なぜ should や原形を使うのかも説明!【英文法の苦手を克服!】
最後に
仮定法過去・仮定法過去完了もまずは基本をしっかり押さえることが大切です。総合英語や英文法書でも確認してみて下さい。そして、たくさん英文を読んだり聞いたりしつつ、自分でも仮定法を使った英文を使ってみましょう。
Kindle版の英文法書を使うと疑問点などを調べる時にかなり便利です。効率よく英語学習を進めることが出来ると思いますので、1冊は持っておいて損はないでしょう。
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