苦手な人や分からないと言う人が多い「英文法の難しい単元・項目」を集中して解説していくシリーズの2回目。今回は、完了形の不定詞とseem型の動詞、時(時制)の組み合わせ編です。
みなさんは完了形の不定詞と聞いて、どんなものか思い浮かぶでしょうか?
He seems to have been rich.
こんな感じのやつですね。特に、「時(時制)の組み合わせのパターン」には混乱してしまう人がとても多いので、ここで完璧にマスターしてしまいましょう!
seem型の動詞
まず、seem や appear のようなseem型の動詞の意味と使い方を軽く確認しておきましょう。それぞれ、
- seemは「(主観的に)~のように思われる、~のようだ」
- appearは「(客観的に)外見が~のように見える、~のようだ」
ということを表すことが出来ます。そして、
- 主語 + [ seem /appear ] + [ ( to + be) + 補語 ) / to +動詞の原形 ]
- He seems ( to be ) rich. 彼は金持ちのようだ。
このような形で使います。( to be )は省略が出来ます。さらに、that節を使った文でも同じ内容を表すことが出来ます。
- It + seems / appear + that 主語 + 動詞 「主語は~するように思われる(見える)」
- It seems that he is rich. 彼は金持ちのようだ。
完了形の不定詞とは
次は完了形の不定詞について確認しましょう。
完了形の不定詞とは、「 to have + 過去分詞」のことをいいます。これを使うことで、「述語動詞から見た過去、現在完了」を表すことが出来ます。
例えば、
He seems to have been rich. 彼は金持ちだったようだ。
「seems (~のように思われる)」は現在のことですが、「to have been rich(金持ちだった)」は過去のことです。このように「述語動詞との時のズレを表すことが出来ます」
不定詞の「 to + 動詞の原形」、完了形の「 have + 過去分詞」を合体させたものですね。なので、「to のあとのhaveは原形」です。
「そんなの当たり前じゃないか」と思うかもしれません。しかし、これから説明する「seem型の動詞の時の組み合わせ」について確認した時、この点が分かってないなという人が多いですよ。
それではみてみましょう。
完了形の不定詞とseem型の動詞「時(時制)の組み合わせ」
述語動詞と不定詞が表す時(時制)の組み合わせパターンは4つあります。さらに、seem型の動詞は、 It を主語にした文でも表すことができますので、全部で8パターンですね。
これ、勉強した記憶ありますか?「あー、やったけど自信ないなぁ」とか「同じようなのがいっぱいあって全然分からん」という人が多いところです。
自分が現時点でどれくらい理解出来ているか、先ほど出てきた英文を使って確認してみましょう。
- He seems to be rich. 彼は金持ちのようだ。
- It seems that he is rich.
2の「It seems that he is rich.」の is が was に変わった場合、2の英文に合わせて1の英文をどう変化させれば同じ意味になるでしょうか?
分かりましたか?これは、
- He seems to have been rich. 彼は金持ちだったようだ。
- It seems that he was rich.
こうなります。2の英文に「seems(ようだ)、was rich (金持ちだった)」というように、時制にズレが出来ますので、不定詞を使って表す1の英文では「to have 過去分詞」の形を使います。
どうですか。これは一番基本の形なので、答えられた人も多かったかもしれませんね。それでは、次の例はどうでしょうか。
- He seems to have been rich. 彼は金持ちだったようだ。
- It seemed that he was rich. 彼は金持ちのようだった。
この2つの英文を「2に合わせて1を変化させて同じ意味にしてみて下さい」
どうでしたか?楽勝!という人はだいぶ理解出来ていますね。これは、
まず1の seems を2の seemed に合わせて(~のようだった)とします。ここは大丈夫ですよね。
次に、2の英文は「seemed」「was」が使われていることで分かるように、両方とも「過去」で時制にズレがありませんね。
時制にズレががない場合の不定詞は「to be」を使いますので、不定詞を使って表す1の英文の「to have been」は「 to be 」に変えます。したがって、
- He seems to have been rich. → He seemed to be rich.
- It seemed that he was rich.
1の英文はこう変わります。意味は「彼は金持ちのようだった」ですね。
じゃあ最後にもう一つ。これは聞いてみたら間違える人がとても多いですね。
- He seems to have been rich.
- It seemed that he had been rich.
2の英文に合わせて、1を同じ意味になるように変化させて下さい。
どうでしょう。よくある間違いは
- He seemed to had been rich.
これがダントツですね。特に「頭がこんがらがってさっぱり…」って人はこれをよくやりますね。ここで考えてほしいのは、先ほども説明した、
完了形の不定詞は、不定詞の「 to + 動詞の原形」、完了形の「 have + 過去分詞」を合体させたものなので、「to のあとのhaveは原形」ということです。
ここが分かっていれば、「 to had been 」は絶対に作らないと思うので、しっかりと頭に入れておきましょう。
では、正解をみてみましょう。
- He seems to have been rich. → He seemed to have been rich.
- It seemed that he had been rich.
2の英文は「 seemed (~のようだった)、had been(seemedよりも以前に~だった)」というように、「過去と過去完了」で時制にズレがありますので、ここは「to have been」のままでいいんですね。
したがって今回の問題は、「seems」を「seemed」に変えるだけです。意味は「彼は金持ちだったようだった」です。
- He seemed to have been rich.
- It seems that he is rich.
1にあわせて、同じ意味になるように2の英文を変化させてみて下さい。答えは次のまとめの表をみて下さい。
述語動詞と不定詞(完了形含む)が表す時の組み合わせのまとめ
- He seems to be rich. 彼は(今)金持ちのようだ。 It seems that he is rich. (現在と現在)
- He seems to have been rich. 彼は(以前)金持ちだったようだ。 It seems that he was rich. (現在と過去)
- He seemed to be rich. 彼は(その時)金持ちのようだった。 It seemed that he was rich. (過去と過去)
- He seemed to have been rich. 彼は(それ以前に)金持ちだったようだった。 It seemed that he had been rich. (過去と過去完了)
- 1、3のように時制にズレがない場合は「to + 動詞の原形」
- 2、4のように時制にズレがある場合は「to + have + 過去分詞」の形で述語動詞からみて過去のことを表す。
この8つの英文を使って、
- 「ここをseemedに変えたら、もう1つの英文はどう変わるか」
- 「ここをto beに変えたら他の部分はどう変わるか」
というような練習を、色々なパターンを考えてやってみましょう。
最初はややこしく感じると思いますが、自分で色々と組み合わせを考えて練習すればすぐにマスター出来ると思います。
私も最初は「どれも似てて混乱するなぁ…」と思っていましたが、一度理解してしまうと意外と難しくないんだと感じましたね。
上の8パターンを全て自信を持って答えられるように整理しておきましょう。
最後に
今回は「seem型の動詞、完了形の不定詞、述語動詞と不定詞が表す時(時制)の組み合わせ」について見てきましたが、どうでしたか。特に「述語動詞と不定詞が表す時(時制)の組み合わせ」については苦手な人がとても多いところなので、しっかりと整理しておいて下さい。
最初は難しいなと思っていても、何度も説明と英文を確認すればすぐに慣れるので、諦めないようにして下さい。とにかく大事なのは
「時制のズレがあれば to have 過去分詞を使う」「to had 過去分詞の形にしたりしないよう注意」
この2点ですね。頭に入れておきましょう。
Kindle版の英文法書を使うと疑問点などを調べる時にかなり便利です。効率よく英語学習を進めることが出来ると思いますので、1冊は持っておいて損はないでしょう。
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英語をたくさん読んだり聞いたりして、実際に使われている英文に出会うことも大切です。
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